定年退職後に加入する健康保険
会社を定年等で退職すると、新たに健康保険に加入することになります。
加入する保険により、保険料が大きく変わります。
定年退職後(途中退職も含む)に加入する健康保険には、以下があります。
- 再雇用で同じ健康保険(会社員等の加入する被用者)
- 国民健康保険(市町村・国民健康保険組合の運営する地域保険)
- 健康保険の任意継続(保険加入期間は最大2年間)
- 家族の健康保険の被扶養者
再雇用や再就職で企業の健康保険(被用者保険)に加入する場合は、給与の増減で変わりますが同じ計算方法になります。
退職して国民健康保険に加入すると、前年度の収入で保険料が計算されるので初年度の保険料は一般に高額になります(都道府県・市民税も同じです)。
このため、加入していた健康保険を任意継続にするのが通常保険料は安くなりますが、会社負担分がなくなり全額負担になります。
全額負担でも初年度は、任意継続にする方が一般に健康保険料は安くなります。
家族(子供)の健康保険(被用者保険)の被扶養者になれば保険料は無料になります(国民健康保険には被扶養者制度ありません)。
被扶養者になるには、60歳未満で130万円未満、60歳以上で180万円未満の年収制限があります。
収入が年金しかない場合は、家族(子供)の被扶養者になるのが健康保険料から見るとお得です。
健康保険の保険料(会社員等の加入する被用者保険)
東京都の協会けんぽ健康保険を例にとると以下のようになります。
□ 40歳未満の保険料計算式
月額標準報酬に料率9.91%をかけた健康保険料を会社と折半します。
標準報酬が50万円のケースでは、保険料が49,550円で自己負担はその半額で24,775円になります。
□ 40歳以上の保険料計算式
40歳を超えると介護保険料が加わり料率が11.56%に上がります。
月額標準報酬に料率11.56%をかけた健康保険料を会社と折半します。
標準報酬が50万円のケースでは、保険料が57,800円で自己負担はその半額で28,900円になります。
□ 標準報酬
原則4月・5月・6月の以下に示す収入の平均値になります。
- 給与
- 通勤手当等の交通費
- 現物支給された報酬
国民健康保険料の保険料
国民健康保険料の保険料は、前年度所得金額(収入ではありません)から基礎控除学33万円を差し引いた算定基準額をもとに計算します。
所得金額は、以下で計算します。
- 公的年金は、支給額から控除額(通常120万円)を差し引いた額
- 事業所得は、収入額から経費を差し引いた額
- 給与所得は、給与額から給与所得控除額を差し引いた額
- 月収50万円の場合の給与所得額は、426万円
□ 保険料の計算
保険料は、以下の3つの合計になります。
- 医療分
- 高齢者支援分
- 40〜64歳は介護分
新宿区を例にとり、60歳の給与収入月額50万円の専業主婦配偶者に子供2人の4人家族の保険料の計算を以下に示します。
月収50万円の方の算定基準額は、393万円になります。
□ 医療分
以下の2つを合計します。
- 均等額:38,400円の4人分で153,600円
- 所得割額:393万円の7.47%で293,571円
- 合計:447,171円(上限額は54万円)
□ 支援金分
以下の2つを合計します。
- 均等額:11,100円の4人分で44,400円
- 所得割額:393万円の1.96%で77,028円
- 合計:121,428円(上限額は19万円)
□ 介護分
以下の2つを合計します。
- 均等額:15,600円の2人分で31,200円
- 所得割額:393万円の1.46%で57,378円
- 合計:88,578円(上限額は16万円)
□ 保険料の合計
以上の医療分・支援金分・介護分を合計すると657,177円になり月額では54,764円になります。
健康保険(被用者保険)と国民健康保険の保険料比較
会社員の加入する健康保険(被用者保険)と国民健康保険の保険料比較を比べると以下になります。
- 健康保険(被用者保険):月額57,800円で自己負担分は28,900円
- 国民健康保険:月額54,764円(全額自己負担)
このケースでは、国民健康保険に加入した方が保険料が安くなりますが、一般には任意継続して以前の健康保険に加入しておくのが健康保険料が安くなります。
任意継続できるのは最大2年間ですが、途中でも退会して国民健康保険に加入できます。
逆に、国民健康保険に加入すると退会して元の健康保険には戻れませんので、迷ったら任意継続をオススメします。
国民健康保険加入者で月額給与収入が50万円ある方は多くはないと思いますが、保険料は全額自己負担で非常に高額になります(50万円の収入が継続してある場合は、被用者保険の健康保険に加入するのが基本です)。
事業収入などで高額(月収数十万円)な収入のある方は、個人事業主に登録して青色申告にすると最大65万円の控除があります。
2017年09月12日(火)